【不都合な真実】売上に彩られたWEBTOONの現実は…赤字まみれの決算書

個人事業主

こんにちは、個人漫画家のポルリンです。

私はこれまで5年連続でクラウドファンディングを成功させ、個人でキャラクター事業を展開しながら、クリエイターのマーケティングについても発信しています。

以前、Webtoon企業(ナンバーナインやソラジマなど)の決算書を分析した配信をしました。

今回はその続編として、「市場が拡大し、売上が伸びているのに、なぜ報酬は増えないのか?」決算書とビジネスの基本から、その理由を解説します。

売上がいくらあっても、赤字なら意味がない

「売上〇億円突破!」──この言葉を聞いて、あなたは「その会社は成功している」と感じますか?

財務の基本を知っている人なら、皆このように答えます。

「利益を生んでいない売上には価値はない。」

どれだけ売上を上げても、利益が出ていなければ意味がありません。むしろ、売上が増えるほど赤字が膨らんでいるなら、それは「失敗を拡大している」ということです。

Webtoon企業の決算書が語る「不都合な真実」

では実際に、業界の決算書を見てみましょう。

  • WEBTOON Entertainment Inc.(米国)
    • 2024年通期業績:売上高13.5億ドル(前年比 +5.1%)、純損失1億5,290万ドル
    • 参考リンク
  • YLAB STUDIOS JAPAN株式会社
  • 株式会社ナンバーナイン
  • 株式会社ソラジマ
  • 株式会社フーモア

知っていましたか?ほとんどの企業が赤字です。

これは、市場が拡大しても売上が立っても利益が出ないビジネスモデルであることを、数字が物語っています。

「赤字は投資」という言い訳にごまかされるな

「今はシェア拡大のための投資フェーズだから」「将来回収するために、今は赤字でいいんだ」──そんな声もよく聞きます。

たとえば楽天モバイルは、電波が悪いと言われながらも、基地局を増やし続けました。それは安定した収入源が他にあったからです(楽天市場、楽天証券など)。最近ようやく、全国で使えるレベルの電波を手に入れています。

これは明確に「投資」ですし、他の安定した収益もあるので投資する余裕があったのです。投資とは余裕資金から行うものです。これは基本です。

しかし、Webtoonはどうでしょうか?作品は、基地局のように「作れば作っただけ利益を生み続ける」ものではありません。旬が過ぎれば読まれなくなり、新刊が出なければ既刊も動かなくなる。それを一番わかっているのは、出版社、編集者、そして私たち作家自身です。note(ノート)

売上が拡大すれば利益が出る──は間違いです。

「今は赤字だけど、売上が拡大すれば黒字化できる」「市場が拡大していけば大丈夫」「インプレッションが増えれば、読者が増えれば」──そう考えていませんか?

でも、その売上を拡大するためにいくら必要でしょうか?市場の拡大についていくためのコストは?インプレッション数を増やすための広告費は?読者を増やすための施策にかかる金額は?

作家の皆さんが勘違いしがちなことがあります。作品は「面白いから売れる」のではありません。

売るから売れる。見せるから見られる。

もちろん、一定以上の面白さは必要です。でも「見せる場をつくる」ためには、お金が必要なのです。

売上が拡大したとき、そこには必ず「かかるコスト」も増えていきます。収益化ができていない段階では、売上と比例して赤字も拡大する──これは財務の基本の話です。

運転資金とは売掛金+在庫-買掛金。電子なので在庫は存在しないと考えるかもしれませんが、その作品を見られるために継続して作品を描き続けなければならないため「在庫」と考えて良いでしょう。でなければ「打ち切り」はありません。作品を在庫と考えたら、それを売るために必要な資金が「運転資金」なのです。タダで売れる訳じゃないんです。つまり規模が拡大したら使うお金も増えるんです。これが現段階で収益化がたっていないと売上を上げても黒字化しない正体です。これはビジネスと資金繰りの基本です。

「何本打ち切りました!」とは言わない業界

「この作品が絶好調です!」──そう聞いたことがあると思います。でも、その一本を生み出すまでに、いったい何本の作品が犠牲になったか?そのヒット一本を作るまでに、どれだけの人件費と制作費を溶かしてきたのか?

この計算を、エンタメ業界はなぜかしません。「〇〇万部売れました!」とは言うのに、「何本打ち切りました!」とは言わない。普通の企業なら、失敗も含めてトータルでいくら儲かったのかを計算します。でもこの業界は、赤字の部分をなかったことにしている。

なぜか?それが自分たちの責任だと思っていないからです。作家のせいにするのは簡単ですが、Webtoonは企業が著作権を持つスタイルなのでそれは通用しません。これに似たスタイルがゲーム会社です。ゲーム会社が1つのヒット作を産み出すまでにかかったコストはしっかり計算されます。しかしWebtoonの経営陣が集まって話していたミライ会議では「いいクリエイターが居ない」などの会話がされており、作品数に比べてヒット数が少ないのは自分達の責任とは微塵も思っていない会話がそこに広がっていました。

「一人当たりの粗利」という基本(続き)

これは社員だけでなく、関わっている外注スタッフやクリエイターまで含めた数字で考えねばなりません。

たとえば、会社が10人のスタッフを抱えているなら、
月に 80万円 × 10人 = 800万円の粗利が必要です。
粗利とは「売上 − 原価」のこと。つまり、単純な売上では足りません。

そしてこの粗利から、家賃・人件費・開発費・広告費・赤字補填分が出ていきます。

この水準を下回っていたら、基本的には赤字企業です。


「でも話題にはなったよね?」に潜む罠

Webtoon作品が一時的に話題になることがあります。
ですが、それは「認知を得た」だけであり、利益を生んだとは限りません

むしろ、広告に数百万円投じて一瞬のバズを起こした結果、
継続収益に繋がらなかった、というケースも多数見受けられます。

「話題になった=成功」ではない。

✅ 成功とは、「利益が継続的に出る仕組みをつくること」です。


「作品が面白ければ売れる」時代は終わっている

Webtoonやデジタルコンテンツの世界では、
面白いだけでは勝ち残れません。

むしろ大切なのは──

  • 読まれる仕組み(プラットフォームや広告)
  • 販売チャネル(電子・紙・グッズ・クラファン)
  • 継続的な運転資金(固定費に耐えるキャッシュ)

つまり、作品だけで戦おうとする時代はもう終わっているのです。


私たち作家が学ぶべきは「数字と構造」

今後、作家が生き残るには「作品力+数字の理解」が必要です。

  • どの作品にコストがかかっているのか
  • そのコストはどうやって回収されるのか
  • 誰が損をして、誰が得をしているのか

そして、最終的にはこう問いかける必要があります。

「この仕事、誰が一番得をしていますか?」

作家が損をして、会社が赤字で、読者が無料で読んでいるなら、
一体誰がこの構造で利益を得ているのか──


まとめ:売上ではなく、利益と構造を見よ

Webtoon業界は拡大しています。
しかし同時に、利益を出せていない会社が多数あるのが現実です。

「売れているように見える」ことと、
「利益が出ていて健全に回っている」ことはまったく違います。

作品に関わるすべての人が、
その「数字と構造」をきちんと見て、判断していくことが、
これからの業界とキャリアを守る上で非常に大切だと私は考えています。

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