最近、漫画家の枠を飛び越えて話題になっている
「表紙、特典、オマケページ無料問題」※
フリーランス新法との関連性についても注目が集まっています。
※ただし、すべての出版社が表紙無償ではなく、有償のケースも存在する。
「フリーランス新法は漫画家と出版社には当てはまらない」という意見も見られますが、
判例がない現状では、断定的な表現は避け、公正取引委員会に確認をとり慎重に議論を進めるべきでしょう。
この記事では、漫画家とフリーランス新法の関係、
漫画家と出版社の本当の関係を、ビジネス的観点からも突っ込んで解説していきます。
公正取引委員会の見解:業界の慣習は通用しない?
「漫画家は漫画を制作し、出版社はそれを販売する」という従来の認識で
公正取引委員会に問い合わせをしてみました。
「業界の個別事情は考慮しない。法の規定に違反する行為は認められない」
という返答でした。
これは、大雑把ではありますが、漫画業界の慣習に関わらず、フリーランス新法に違反する行為は認められないということを意味します。
何を言いたいのかと言うと
判断するのは漫画家でも出版社でもなく公正取引委員会である
ということです。
法はそれほどに強い効力を持つため知っておいて損は全くないと考えます。
フリーランスの方は自分の扱いと仕事の進め方に疑問を持ったら
公正取引委員会に確認を取るようにしましょう。
弁護士さんに聞くのもありですが判例を元に判断することが難しいため
先に公正取引委員会へ確認するのが良いと考えます。
問い合わせ先
公正取引委員会事務総局経済取引局取引部取引企画課フリーランス取引適正化室
電話 03-3581-5479(直通)
ホームページ https://www.jftc.go.jp/
フリーランス新法とは? どんな漫画家が適用されるの?
2024年11月から施行されるフリーランス新法は、フリーランスと企業間の取引をより公正にするための法律です。
フリーランス新法では、「従業員を雇用していない」フリーランスを保護対象としています。
ここで重要なのは、「従業員」の定義です。フリーランス新法では、週20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれる人を「従業員」とみなします。
つまり、アシスタントを雇用している漫画家さんでも、そのアシスタントが週20時間未満の短時間労働、あるいは31日未満の短期雇用であれば、フリーランス新法で保護される「特定受託事業者」に該当する可能性があるのです。
例えば、
- 週に数日だけアシスタントに来てもらう
- 締め切り前に短期間だけアシスタントを雇う
といった場合は、フリーランス新法の保護対象となる可能性が高いでしょう。
逆に、アシスタントを週20時間以上、31日以上雇用している場合は、フリーランス新法の保護対象外となります。
※こちらについては要確認とのご指摘をいただきました。
上記の条件でも業務委託契約であればフリーランス新法の保護対象となる、とのことです。
確認次第こちらも更新したいと思います。
雇用保険の加入条件は、フリーランス新法の適用対象となるかどうかの目安になります。アシスタントが雇用保険の加入条件を満たしている場合は、フリーランス新法の対象外となる可能性が高いでしょう。
そして出版社は発注事業者ではなく共同制作者、商品を販売する側
とする意見がありますが、フリーランスの作家がそれに該当するかどうかを決めるのは
公正取引委員会です
フリーランス新法に触れるようにするか触れないようにするかは
今後の出版社次第と言えます。
団体である以上、作家の扱いに差があるのも事実ですし
全ての作家が共通で思っていることがあります。それは
「編集さんも色々いる」です。
つまり良い作家の扱いをしている人もいれば悪い作家の扱いをしている人もいる
その悪い作家の扱いをしている人に当てはまってしまうのが今回のフリーランス新法です。
これは今回の法では漫画家側ではなく出版社側の責任問題です。
社員教育は会社の義務であり、それによって生じた問題は法の元に
会社が公正取引委員会に説明する義務があり
指導を受ければそれに応じて契約書を作成する義務が発生してしまいます。
今回のフリーランス新法は企業からしたらデメリットの部分が大きいでしょう。
営利企業である以上目的は人気作品の獲得です。
数多のクリエイターから未来の人気作を出すために全てのクリエイターを保護していたら
資金がまわらなくなる可能性が高いです。
これまで共同制作者、漫画を販売する仕事
として分けて考えていたことの弊害と言えるかもしれません。
ですのでどのようにこの法を回避するかをまず考えると予想します。
残酷な話ですがそれを頭において法を理解するのが公正な取引をする第一歩です。
交渉力と創作の自由とブランドイメージ
新人作家の時は出版社のブランドイメージに合わせた作品作りを求められることが多く、表紙のデザインについても、出版社の意向が優先されるケースが多いです。
理由はそれ以外にも一定の傾向の読者がいる雑誌ではその傾向のファンがつきやすい
というターゲティングが既に出来ているという面もあります。
極端な話で言えば少女漫画の中でバトル漫画風の表紙を描いたとして
新人作家ではOKが出にくいということです。
著者の言い分が「少女漫画の中にあるからこそ目を引く」と主張したとしても
「うちの雑誌のカラーにそぐわないと売上が減少する可能性があります」
として反対されるでしょう。これは拒否をしている訳ではなくビジネスの考え方の違いによるものですが、販売をするのが出版社である以上出版社のブランドイメージの方が優先されることが多いです。
理由は出版社やその雑誌のブランドイメージで各取引先にビジネスを持ち掛けているからです。
これも極端な話ですがバトル漫画はお酒のCMに使うことは出来ません。
酒・暴力と結びつくものは基本的にNGなので爽やかなブランドイメージでなければなりません。
ですので漫画家と出版社は共同制作者である
というご意見もあると思いますが、厳密に言うと
共同制作者と下請けに近い作家とその中間の作家が存在する
が正解と考えます。
そのイメージは作家の実力により、よりブランドイメージに近づけた方が売れるというパターンと
とにかくブランドイメージに使づけて欲しいと言われるパターンと色々あるためです。
上記の編集さんは色々いる、に通じており
作家が多様化しているため一律の経営方針では制御できないためです。
作家の著作物が圧倒的に強い場合は逆となることもあり、そのイメージにあわせた方が売れる
としてやはりブランドイメージに左右されるでしょう。
これは出版社がある程度方向性を決めているため、新人の時でも自分の作風にあった読者が集まる編集部で売れる可能性がある、というメリットにもなります。
一番わかりやすのは既存作品で申し訳ありませんが
「進撃の巨人」です。※大ファンです。
「進撃の巨人」の諌山先生がジャンプに持ち込んでいた、というのは有名な話です。
この時ジャンプのブランドイメージ的にダークファンタジーの進撃の巨人はあわなかった。
結果論ではありますが進撃の巨人は別冊少年マガジンで連載し世界的な巨大コンテンツになりました。
もちろんジャンプにそのまま出ていたら読者層の違い、執筆速度の違いなどで売れなかった可能性もあるという意見もございます※わたしは大ファンです。
ここで言いたいのはそれほどにブランドイメージは大事にされている、という点です。
これはその時の編集さんが見る目が無かったとかではなく
企業、組織としてはある程度理解できる判断です。
このように、漫画家は出版社のブランドイメージに影響を受けながら作品作りをしていることが多いため、
「共同制作者」と
「出版社の意向に沿って作品を制作するフリーランスという側面が強い作家」そして
「その中間に居る作家」が存在すると言えるでしょう。
これは出版社側になって経営をすると良くわかります。
本当に作家の好きに描かせて雑誌を組んでいたら
「おたくはどんな商品を扱ってるんですか?」
という説明がしにくくなりますし読者層もバラバラになり後続の作品の方向性が難しくなります。
現在の諌山先生がジャンプに行くと言った場合、喜んで受け入れるはずです。
それはブランドイメージを超える経済効果が見込めるからです。
しかしジャンプにあわせた作品を編集側は希望するとは思います。
著作権について
「漫画の著作権は、漫画家の作品を出版社が販売するという構図だから守られている」という意見がありますが、フリーランス新法では、業務委託契約において著作権の帰属を明確にする必要があります。
具体的には、業務委託契約書に、著作権の帰属先を記載する項目があります。ここで「著作者に帰属する」と明記することで、漫画家は著作権を保持することができます。
例えられていたのは表紙を描く描かないを印税に入れるか否かで印税が減額されるかもしれないという点です。しかし、フリーランス新法では、不当な減額は認められていません。
つまり、フリーランスの漫画家が不当な減額を受けたくないという場合、フリーランス新法によって保護される可能性があります。
ただし、個々の契約内容や取引の実態によって、法律の解釈や適用は異なる可能性があります。
ここでよく「契約書でがちがちになるのは嫌だ、自由にできないのでは」
という意見があると思いますが、それを護るのも契約書です。
契約書を作りなれていない作家にとって「契約書は嫌なもの、逃げられないもの」
としてイメージする人が多いですが。それは契約書の書き方次第であり
双方の権利が護られる契約書は存在します。
読み方がわからなければGeminiなどのAIツールで読み込めばある程度は解読してくれます。
専門用語や複雑な条項も、質問すればわかりやすく解説してくれるので、とても便利です。
今は、このように契約書を理解するためのツールが充実しているので、
積極的に活用してみるのも一つの手段です。
最終的に弁護士さんに確認をするのがおすすめです。
この著作権をめぐっては度々漫画家と出版社の間で議論が交わされてきました。
著作隣接権がそれにあたります。※ここでは詳細は省きます
漫画家の権利を護るために「漫画家の著作物を出版社が販売する」という形に
こだわるのもわかります。
コメント