漫画家と出版社とフリーランス新法、公正取引委員会の見解は?:知っておきたいこと、これからのこと

ビジネスクリエイターへの道

出版社のビジネスモデル:多岐にわたる収益源

「漫画家の作品を出版社が販売している」という構図は、
形的にはシンプルですが今はそれだけではありません。

出版社は、漫画家の作品を単行本として販売するだけでなく、ウェブサイトや雑誌への掲載、広告宣伝、グッズ販売、電子書籍化、海外へのライセンス販売など、様々な形で利用し、収益化を図っています。また、漫画家の著作物を含む出版物のラインナップを基に、金融機関から融資を受け、事業を拡大し他企業へのアピールにしていくこともあります。

例えばKADOKAWAでは借入総額は約1,497億円となっています。※2024年3月期
これはKADOKAWAが上場しているので決算書が見れるために確認できます。
この資金力を引き出せるのがブランドイメージと取り扱い商品のラインナップです。
漫画家が小説家の方よりも「発注された」「依頼された」と感じる点はここだと感じます。
このブランドイメージと取り扱い商品ラインナップを説明する時に

単行本の表紙を使います。

使わない訳がありません。
なので漫画家の方が出版社に使われているイメージはやはり強いと感じます。
これが白紙だらけの表紙だった場合
そんな会社にお金を出しますか?新人が持ち込みにきますか?

漫画業界の課題と未来:新しい時代に対応するために

書店数は1996年をピークに、右肩下がりとなっています。※資料
従来のビジネスモデルは、限界に達しつつあります。
というよりも従来のビジネススタイルから変わっており、規模も大きくなり過ぎたため
漫画家と出版社は共同制作者という枠と下請け的フリーランス作家、に分かれていると認識した方が自分を護ることが出来ます。これは現在の自分の立場がどこにあるのか冷静に考える必要があります。

全てのクリエイターが平等に扱われるなんて夢のような理想郷は存在しません。

団体や組織とはそういうものと理解した方が自分を護れます。

また従来発生するはずだったコストを不明瞭にしていたため
収益化の明確化が難しくなっています。
※税理士的に細かいことを言えば無償で提供された表紙を自社のブランドのマネタイズに利用する場合は出版以外の報酬を支払う必要がある。と言われると思いますが、そこまで細かくしているところは無いと思います。
実際にかかった労働とコストで利益を計算するのはマネタイズの基本です。
それをうやむやにしてきたのがこの数十年と言えるでしょう。

フリーランス新法は、漫画業界にとって、作家と出版社の関係を見直し、
より公正で健全な取引を実現するための契機となる可能性も秘めていると考えます。

「これまではこうだった」という過去の慣習を元に、
「これからはこうしていった方がいい」という建設的な議論を通して、
新しい時代に対応した漫画業界を創造していく必要があるでしょう。

身も蓋もないまとめ方をすると

すべては法で決まる

が大前提でしょう。なぜなら

著作権も法です

その効力が強いためどうやって扱うかで議論されているはずです。
法の勉強が一番最初で問題ないと個人的には思います。
何度も言いますがこのフリーランス新法がどのように適用されるかは
公正取引委員会にしかわかりません。
1899年著作権法が制定された時どこに確認しに行ったでしょうか。
そしてそれを一番理解しようとしているのが弁護士さんです。
それを漫画家と出版社が「これまではこうだった」
と説明しても解釈が変わるとは考えにくいです。

最後に出版社側にたって会社を経営してみましょう。

あなたは出版社を経営しました。
漫画家を集めたので似た傾向の人たちで雑誌を組みました。
原稿料は雑誌の想定売上部数で売上を上回らないよう確保するようにしました。
人気作家が離れないようそちらには原稿料を多く、それ以外の作家は原稿料を少なくして対応しました。
売れる雑誌売れない雑誌が出てきたので売れる雑誌を中心に社のブランドイメージを作りました。
売れている雑誌の方が新人が集まりやすいため、才能がありそうな作家は売れている雑誌でブランドイメージにあわせてマンガを描いてもらい雑誌の収入の最大化を狙いました。
単行本の印税は割合で決め、書店には配本を返品制で買い取ってもらうことで印税と製本、その他諸費用の支払いをクリアしました。売れ残った本は出版社に返品されることもありますが、返品率が高くなると、出版社との取引に影響が出る可能性もあるようにします。
このシステムにしているため刷り部数=売上(収益ではない)に出来ているので融資(融資は収益ではなく売り上げで決まるため)を最大化出来るようにしました。
業務内容を説明する時のラインナップは一番売れている単行本と商品の取り扱い本数を一例にして示しました。
その融資を使い宣伝やグッズ制作、メディアミックスなどを利用し規模を広げました。


これはあくまで一例ですが組織としてあり得る仕組みです。
出版社を批判している訳ではありません。
理想は大事ですが現実の仕組みとしてこうなる可能性が大きいのです。


さて…漫画家が共同制作者として、商品を売ってもらう取引相手として
どのラインに組まれているか、どの規模なら入れるか
そして経営者なら利益を最大化するためにはどこを削るのか
新人作家の育成、人気作家の確保のためには…?

どの規模の作家を共同制作者と捉え、どの規模の作家を下請け的に扱うでしょうか。
そしてフリーランス新法が適用される作家、必要となる作家とは。

もう一度よく考えてみましょう。

参考資料:

この記事が、全てのクリエイターの活動の一助になれば幸いです。






ここまで漫画家と出版社の関係などについて色々触れてきましたが
本当にこの法が必要なのはここではなく

webtoon業界です。

Webtoon業界の問題については、

  • プラットフォームと作家の力関係
  • 契約内容の不透明さ
  • 著作権の帰属に関する曖昧さ
  • 収益分配の不公平感

など、今回のフリーランス新法が全てぶっささる問題を抱えています。

ある意味流れ弾をくらったのが漫画家業界と出版業界と言えるでしょう。

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