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ありがとうございます!誠実にクリエイターのためになる分析を続けてきてよかったです。
フォロー&リポストされましたのでこちらにも記事を残しておきたいと思います。
以前書きました決算書徹底比較が大変好評でnoteマネーにもピックアップされ、
GoogleのTOPにもきていますので、今回はその続編です。
最新の官報にて、株式会社ナンバーナイン(第10期)
の決算が公示されました。
株式会社ナンバーナイン 第10期決算公告 | 官報決算データベース株式会社ナンバーナイン 第10期決算公告 東京都品川区 代表: 小林 琢磨 純利益: ▲3億4,980万1,000円 利益catr.jp

率直に言えば、約3.5億円の赤字。
この数字が何を意味するのか。似た業態である株式会社ソラジマ(第7期)の決算と比較し、現在Webtoon業界が直面している深刻な「構造的リスク」を解説します。
ビジネス判断の基準である「資産の増加と利益の不整合」という視点から、両社の実態を冷静に整理します。
1. 損益の推移:赤字の「質」の違い
まずは公表された純損益を確認します。
- ソラジマ
- 第6期:5,161万円の赤字
- 第7期:7,488万円の赤字
- ナンバーナイン
- 第9期:5,800万円の赤字
- 第10期:3億4,980万円の赤字
両社ともに2期連続赤字です。本来、赤字が2期連続で膨らむことは「改善の見込みがない」と判断され、資金調達に大きな影響を及ぼします。
一見、ナンバーナインの方が赤字幅が大きく見えますが、重要なのはその「赤字の計上方法」にあります。
2. 固定資産の肥大化と「実質赤字」の推計
貸借対照表(BS)において、最も対照的なのが「固定資産」の項目です。
- 固定資産の推移
- ナンバーナイン:約1.2億円(前期から微減)
- ソラジマ:8.5億円(前期5.1億円から約3.4億円の急増)
ナンバーナインは、投資した制作費や経費をその期の費用として適切に処理しており、数字に「無理」をさせていないことが伺えます。
一方でソラジマは、既にナンバーナインの約8倍、8.5億円ものコストを「資産」として計上し、赤字を7,400万円台に留めています。もしナンバーナインと同じ会計基準を採用し、これらの資産を費用として適切に処理した場合、ソラジマの「実質的な赤字」はナンバーナインを大きく上回る可能性が高いと言えます。
※簡単に説明すると資産とは利益を産み出すことが出来るものです。
8億をつかって7400万の赤字という状態が何を意味するのか。
3. 22.5億円の負債という「支払いリスク」
クリエイターが注視すべきは、流動負債の規模です。
- 流動負債の比較
- ナンバーナイン:8.5億円
- ソラジマ:22.5億円
流動負債とは、1年以内に支払いが必要な負債です。 ソラジマの負債はナンバーナインの約2.6倍に達しており、さらに「ベンチャーデット」という高利かつ返済義務の強い資金調達を併用しています。 これほど巨額の負債を抱えながら、赤字が7,488万円に留まっているのは、数字の見せ方の問題だと推察します。
企業の規模的に両社にそれほどの差はありません。
ナンバーナインが適切な会計処理をしていると仮定した場合、ソラジマの赤字はそれ以上の可能性すらある、というのがわかると思います。
いずれ※減損処理によって、この数字が浮き彫りになるのは時間の問題でしょう。
※減損処理とは
資産(制作費など)として計上したものの、期待した利益を生まないと判断された際に、その価値を切り下げて「損失」として一括計上する会計処理のこと。
重要なのは他にも、赤字決済の後に「返済」でキャッシュが出ていくという構造です。融資の返済は赤字の後に計算されます。つまり実質これ以上のキャッシュアウトが予想され、資金繰りについてはより冷静に見ていかねばなりません。
4. 結論:数字が示す「出口」の不在
- ナンバーナイン:増資で得た資金をそのまま赤字補填に充てている
「投資依存型」。 - ソラジマ:投資に依存しながら負債を膨らませ、コストを資産に化けさせることで赤字を圧縮して見せている「レバレッジ型」+「投資依存型」。
どちらも楽観視できる状況ではありませんが、特にソラジマの「負債22.5億円に対して、中身の不透明な固定資産8.5億円」というバランスは、将来的に一括償却を迫られた際、一気に経営を揺るがす地雷となります。
両社も投資に依存している以上この数字の見せ方が投資家達にどう判断されるかが課題です。そのためにも新企画+プレスリリースで
「自分達は好調である!」と主張しなければなりません。
しかし我らクリエイターは官報に刻まれた「逃げられない数字」を、企業の真実として見なければなりません。それは何故か。
5. 社員数と「外注クリエイター」の生存戦略
両社が危険な状態にあることに変わりはありません。
それを経営陣が適切に説明できるのか、それともプレスリリースの華やかな説明のまま人事を動かしているかで状況は大きく変わります。
募集要項に「黒字経営!」といった誤解を招く表現に報酬幅が大きい場合は特に要注意です。無い袖は振れないのです。
あなたが20億の負債を抱える企業のTOPなら
人件費を「削りますか?」「増やしますか?」ということです。
さらに重要な指標は「社員数」です。
- ソラジマ:約50名
- ナンバーナイン:約100名
外注クリエイターは特にここを注視すべきです。
外注クリエイターは出来高制のため、社員のように毎月給与が保証されているわけではありません。万が一支払いが滞った際、法的な支払い優先順位は以下の通りとなります。
税金 > 銀行(融資の全額返済) > 社員の給与 > 外注クリエイター
外注クリエイターは最後順位となり、法的に守られにくい状態です。
実際に、Enty株式会社は未払いのままサイトごと消滅しました。
赤字決済の場合はこうした事態を常に想定しておく必要があります。
お金が無くなってからでは遅いのです。
実際、ソラジマはYouTube事業からWebtoon事業に転換する際、ほとんどの外注クリエイターを即切りしています。その時の赤字は約1億円。
残酷な話ですが、「外注はいつでも切れるから良い」というのは、ビジネス上の冷徹な事実です。しかし今はフリーランス新法があり、事後報告は許されません。
私たちクリエイターは、常に発注元の「状態」をチェックし続けなければならないのです。
まとめ
両社ともわたくしが初期に関わった企業ですが、明らかにwebtoonに移行してからお金の流出が止まらなくなっています。ナンバーナインも電子書籍事業のみのときは順調に黒字をまわしていましたが、利益剰余金(累計赤字)がついに5億を超えました。
明らかに言えることは両社ともに
「もう止まれない!」と思っていることでしょう。
「この重なった負債を逆転しなければ!今止めたら全て無駄になってしまう!」 そう思っているはずです。
しかし思い出してください。
その思考はギャンブルと一緒です。
これはビジネスなのです。
そして、賭けているチップは他ならぬクリエイターの時間。
これに勝ってもクリエイターの報酬は増えません。
投資家に還元され、銀行に返済され、役員、社員に還元され、ようやくクリエイターの番か?と思っても報酬が上がることは無いでしょう。
出版社の印税はここ50年で上がりましたか?
自分の時間とお金を大切にしましょう。これからもインフレがあります。



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