なぜWebtoon事業は赤字になるのか?クリエイターは誰でも理解できる構造的問題

ビジネスクリエイターへの道

最近「webtoon 赤字」で検索される方が増えてきました。
恐らくこの記事が注目されているからだと思います。

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今回は改めて、なぜWebtoon事業が赤字になるのかを、
クリエイターから整理して解説します。
その背景には、出版事業から続く「継続的赤字構造」があります。

目次

  1. 分業制
  2. 原稿料という概念と実際のコスト
  3. 「数撃ちゃ当たる」は通用しない
  4. 固定費の膨張と悪循環
  5. 仲介業者によるマージンの発生
  6. 宣伝コストの違い
  7. まとめ:なぜ赤字なのか?

分業制

漫画を描いたことがある人ならこの単語だけで
「あぁ…そら無理だわ」と一発で理解できます。
webtoon事業は分業制で
ネーム、キャラ、背景、効果エフェクト、色塗り
などの作業分担がされています。
ではなぜそれが赤字の原因なのか?

原稿料という概念と実際のコスト

原稿料は「雑誌に掲載するための報酬」として、1ページ単位で設定されてきました。

  • 横描き漫画では1ページに最大7コマ入ることがあります。
  • 背景1コマを描くのに5,000円としましょう。4時間で仕上げて時給換算すればギリギリ赤字にならない水準です。
  • 2コマ背景があれば?キャラが3人いれば?トーン・ベタは1ページ2,000円でしょうか?
  • 物語を考えるコスト、ネームを描くコストは?
  • それまでにかかった打ち合わせの時間については?
  • 更にそのネタを描くに至ったリサーチや取材の数々

こうした積み重ねは、1ページ8,000円~15,000円の原稿料では到底足りないのです。
実際には少なく見積もっても
1ページあたり3万5,000円以上の労力がかかります。
作家はそれを「頑張りと努力と情熱」で1万円以下に抑えてきただけに過ぎません。

ところがこれを基準にWebtoonでは、
1ページ=1万~1万5,000円と安易に計算されてしまいました。
編集は編集からしか話を聞かず、
作家の実態を見ていなかったために起こった誤算です。
しかし実際作業を分担させるとかかるコストは1ページ3万円以上
約3倍のコスト増がのしかかってきます。


「数撃ちゃ当たる」は通用しない

「漫画は何が売れるかわからないから数を撃つしかない」――この発想こそ大きな間違いです。

他の業界ではどうでしょう?
どの企業も研究分析を行い、そのデータを蓄積し、ヒット率を高めています。

一方で漫画業界はどうかというと、雑誌に載るまでは無報酬で制作してきました。編集会議で「面白い」となったらGO。その時点まで費用は発生しない。

しかしWebtoonでは制作コストが高いため、無料で作ってくれる人などいません
※コンテスト形式では話は別なので〇〇コンテストというのが乱立します。
つまり「テストプレイ=研究開発」にあたる部分に、最初から膨大な資金が必要になります。
データも仕組みもないまま資金投入を繰り返すので、ヒットまでの道のりが極端に長くなってしまうのです。


固定費の膨張と悪循環

こうした構造的な赤字の上に、さらに社員増員・外注増加で固定費が膨らむとどうなるでしょうか?

  • 固定費が増えれば、変動費(外注費)を削らざるを得ません。
  • 給与は簡単に下げられないため、質の悪化を招きます。
  • 質が落ちればヒットが遠のき、さらに赤字が拡大します。

こうして悪循環が生まれてしまうのです。


仲介業者によるマージンの発生

さらにWebtoon事業は制作人数が多いため、外注スタッフを探す際に仲介業者を挟むケースが一般的です。

  • 仲介業者は当然マージンを取ります。
  • その結果、クリエイターに渡る報酬はさらに削られます。

これまでの出版事業では、アシスタントは作家が自分で探すか、編集から紹介してもらうケースが多く、中間マージンは発生しませんでした。この違いもまた、Webtoon事業の赤字を拡大させる要因の一つになっています。


宣伝コストの違い

従来の漫画事業は、作家が自発的に宣伝してくれました。出版社はほぼ“無料の広告塔”を享受してきたわけです。

ところがWebtoonでは、企業が広告費を出して宣伝するしかありません
この構造の違いを理解できていなかったことも、赤字拡大の一因です。


まとめ:なぜ赤字なのか?

  • 原稿料の誤算(実労コストと乖離)
  • 研究開発プロセスの不在
  • 固定費膨張による悪循環
  • 仲介業者によるマージン構造
  • 宣伝コストを企業が背負う仕組み

これらが積み重なり、Webtoon事業は最初から構造的赤字に陥っていたのです。webtoon entertainmentの決算書からはその数値が出ていました。

これらの構造を理解し、どこを修正すればいいのか。
もしあなたが経営者なら、この構造をどのようにクリアしますか?


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